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セントラル・バンク・ウォッチャー:トレードオフの関係に

米国の輸入関税を巡る動向を背景に、市場ではボラティリティが高止まりしています。確実に言えるのは、対米貿易にかかる関税率が4月2日以前よりも高くなるという点です。 


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    Strategist
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まとめ

  1. 米連邦準備制度理事会(FRB):状況を見極め静観の構え
  2. 欧州中央銀行(ECB):機動的に緩和を進める方針
  3. 中国人民銀行(PBoC):タイミングが極めて重要

現在の貿易交渉の結果にかかわらず、景況感はより不透明になっています。その結果、FRBは、関税引き上げに起因するインフレの上昇か経済成長の減速の二者択一を迫られることになります。

一方、ECBは違う形でジレンマに直面しています。現時点では、政策金利は景気を刺激する水準に達していないため、利下げを継続すべき明確な根拠が存在します。また、インフレが低下する中で、関税を巡る不確実性によって経済成長が打撃を受ける可能性は非常に高いと見られます。もっとも、3~6カ月先を展望すると、状況は変わっている可能性があります。年末にかけて、先般発表されたドイツの大規模な財政刺激策と、ユーロ圏全体における防衛費の増額が、経済成長を下支えする効果をさらに発揮することも考えられます。そのような展開になれば、ECBは金融刺激策を継続するか、引き続き財政政策の効果に委ねるかというトレードオフに直面するかもしれません。

中国に目を向けると、引き続き金融政策はまったく異なるサイクルにあります。過去7年間にわたり、おおむね緩和的なスタンスを維持してきた中国人民銀行は、ここ最近、新しい刺激策を発表しました。また、近い将来ではないにせよ、追加緩和の実施も十分に想定されます。

これに対して日銀は、引き続き利上げを志向しています。インフレ圧力の再燃がその要因ですが、足元では、関税を巡る不確実性が経済成長を下押しする景気局面を迎えています。もっとも、先行きの不透明感によって利上げのペースは鈍化したものの、方向性が変わったわけではなく、今後も追加利上げの可能性が高いとロベコでは考えています。

図 1 – 中央銀行の政策金利の見通し

出所:ブルームバーグ、ロベコ。2025年5月12日時点の金融市場先物・先渡取引に基づく。

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